自然と同じことが身体の中でも起こる
熄風(そくふう)剤とは体の中に風が吹いている状態(内風)を鎮める薬のことを言います。
風が吹くと木の上の葉がゆれますね。
それと同じように人間の体の上部に症状が現れます。
それが、耳、目、頭の症状として、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛として現れます。
人間も自然界の一員。
自然と一体となって生きている。
したがって、自然という大宇宙の中に人間という小宇宙が存在する。
東洋医学・哲学で言う「整体観」であり、
「天人合一」の教えの出だしでもあります。
だから自然と同じことが身体の中でも起こる。
イライラ身体がざわつくと、風が生じる。
どういう事かと言えば、
色々な悩みだったり、心が落ち着かなかったり、焦っていたり、
いわゆるストレスが多い状態になると、
あたかも自然界の中の木々の葉がざわざわ揺れ動くかのように、
心がざわつき風を生じ、
上にあがってきて、症状を呈してくる。
漢方は理屈ではなく感性の世界。
葉がざわつき始めそれが徐々に上ってきて、木々の葉を揺らす。
もう少したとえてみると、
寒い日の川面から湯気が立ったり、
暑い日のアスファルトから逃げ水が昇ったりするのと同じことが身体の中でも起こっていて、
それが皮膚に出てくることもあれば、
やがて身体の上部に出てきて、
めまいや耳鳴り、頭痛になる。
このように考えることのほうが何か科学的と感じませんか?
想像する世界の真骨頂です。
話を戻しますが、
体の中の風(内風(ないふう)と言います)はなぜ生じるかというと、
「肝」の異常で起こると考えます。
肝風内動といい、
肝という臓器は漢方では自律神経や、ストレスと非常に関係深く、また血液を貯める臓器です。
したがって、めまいや耳鳴り、頭痛の症状のほかに、
肝の異常、つまりは自律神経系統の興奮であったり、しびれやけいれんが生じやすくもなります。
風の状態により4種類に分かれ、
肝陽化風(かんようかふう)
肝を動かす力(陽気)が異常興奮になり、感情の高ぶりや急激な頭痛、めまい、耳鳴り、血圧上昇、こん睡等の症状が起こる。
代表的な漢方薬は釣藤散がある。
血虚生風(けっきょせいふう)
肝の血液を貯める機能に不都合が生じ、血液が不足して起こる。
血液をつくるもとは食べ物で、消化吸収するところは漢方的には脾。
この脾系統の消化吸収納涼を上げることも肝要となる。
主な漢方薬は抑肝散がある。
陰虚内風(いんきょないふう)
血液を貯める肝系統と、水分をつかさどる腎系統の不足により体全体の水分が不足して風が生じる。
自然界で言えば逃げ水的なこと。
潮熱(ちょうねつと読み、熱が出たりひいたりを繰り返すこと)や手足のほてりや寝汗の症状も出やすくなる。
主な漢方薬は六味丸がある。
熱極生風(ねっきょくせいふう)
熱性病の最盛期に起こるようなけいれんや意識障害を伴うもの。
主な漢方薬には羚羊角鈎藤湯がある。
この中で慢性的な耳鳴りめまい頭痛に特に関係があるのは、肝陽化風、血虚生風、陰虚内風です。
それぞれ、微妙な体質の変化により使い分け、この3種のうちにもまた数種類の漢方薬があります。
ぜひ専門のところでのご相談を。