症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/11/14 (火)

食に感謝する秋まつり

 
9月から11月は、秋まつりの季節ですね。

私の地元でも、10月には総氏神の例大祭、11月初めには市内各地の神社にてお祭りが行われています。

小さい頃はお祭りの意味などもよく分からず、みんなでお揃いのハッピを着て、おじさんの掛け声や太鼓、横笛に合わせてリコーダーを吹きながら、朝から夕方まで練り歩いていたのを思い出します。

このコラムを書いている今は、ちょうどお祭り直前。
夕方になると近くの神社の方から、子供たちが熱心に練習する笛や太鼓の音が聞こえてきます。


地元のお祭りには「やぶ」という、鬼のようで鬼ではない、神様の遣いが現れます。
やぶの役目は、神様の警護と道案内。奉納するお米におかしなものが混じっていないかチェックしたり、籾のついた米を揉んで殻を落としたりするために、社殿の前で米俵をのせた神輿(俵みこし)とぶつかり合うのが大きな見せ場です。

赤ちゃんを抱っこしたご家族が道端にいらっしゃると、ここもやぶの出番。
小さな子がぎゃんぎゃん泣きわめくのもお構いなしに抱き上げ、ご家族は大喜び。
やぶに抱っこされた赤ちゃんは、元気に育つと言われています。

自分より体が大きく、怖いお面を被り、竹の棒を持って無言で私たちの行列に付き添う「やぶ」に、ちょっとした恐ろしさと、どこか憧れのようなものも感じた記憶があります。
私の地域では、やぶに扮しているのは近所の中高生のお兄さんなのですが、きっと、その神聖さと包容力のようなものを、無意識に感じ取っていたのかもしれません。


恥ずかしながら、当時は「笛を吹いてやぶと練り歩くお祭り」という認識。

しかし改めて記憶をたぐり、意味を調べてみると、
やぶと俵みこしの格闘があったり、
道中では美味しい白むすびがふるまわれたり、
神社に戻ると温かい甘酒が用意されていたりと、
みんなで収穫を祝い感謝する行事だったことがわかり、
とても素敵なお祭りだなぁと感じます。
  
日本では昔から、五穀豊穣や無病息災を祈り、収穫を祝い、神様に感謝するお祭りが各地で行われてきました。

お祭りが始まった頃というのは、今のような農耕技術や科学技術はなく、作物の収穫は不安定で、疫病により次々と人が亡くなってしまう時代。
幼い子供の成長や日々の暮らしを安定させるために、地域の人々が一丸となって、本気で神様に祈りを捧げ、命あることに感謝していたのだと思います。

技術が進化発展し、食に困ることが減り、栄養失調や疫病で子供が成長できないような環境は、現代の日本では少なくなりました。
それでも、昔から受け継がれてきたお祭りがこうして今も継続されていることに、なんだか深く感じ入ってしまいます。

そして、
神様だけではなく、
今日まで命を繋いできてくれた方々に、
毎日私たちが食べるものを作ってくださる方々に、
未来のために研究を重ねてくださっている方々に、
感謝の念が湧いてきます。


皆さまの地域では、どのような秋まつりが行われていますでしょうか?


お祭りの雰囲気を楽しみつつ、
美味しい穀物がいただけることに感謝して、
お蔭様で今ある命に感謝して、
今日も一食一食、大切にいただきたいと思います。