症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/03/13 (月)

【気のめぐりと感情】

中医学では、
「形神合一(けいしんごういつ)」
「心身一如(しんしんいちじょ)」
という言葉があり、
「精神と身体は一体ですよ」
「意識・思考や感情、精神状態と、身体の状態は繋がっていますよ」
と教えてくれています。

ここでは、痩せにくい原因に繋がりやすい感情にポイントを絞って、身体への影響を解説します。
 
過度/長期的な感情と気のめぐりの関係
中医学では「七情五志」といって七種の感情変動があり、内臓機能と連動していると考えています。
とくに気のめぐりとの関連性について、以下のように分類されています。
気が上がる 怒る、イライラする
気が緩む 喜ぶ、楽しむ
気が結ぶ 思慮する、考えを巡らせる
気が消える 悲しむ
気があつまる 憂う、苦慮する、悶々と悩む
気が下がる 恐れる
気が乱れる 驚く
 
これらのうち過度な(もしくは長期的な)「怒、思、憂」の感情は、気のめぐりを滞らせる原因になります。
また、「悲、恐」の行き過ぎや慢性化は気を消耗することから、結果的に気の停滞を引き起こすことがあります。

(※1 中医学的な分類のひとつ「五臓」の働きと関連しています。)
(※2 場合によっては、逆に病的な痩身に繋がることもあります。)


どれほどの感情変動が、どれくらい気のめぐりに影響を与えるのか、そして身体的な変化を引き起こすのか、というところは、もともと持っている性格や感受性、体質によって個人差があります。
人の感情は複雑なので、一様に上記のような変化が起こるとも限りません。


ただ、
「こんなに食事も我慢して運動も頑張っているのに…」
「あれこれ制限した生活が、すごくストレス!」
「なんで痩せないんだ…なぜだ…」
などの感情の沼にはまっている時というのは、気が停滞してしまい、せっかくダイエットを頑張っているのに逆効果になっているのです。
もちろん、ダイエットの事以外に、仕事や家庭など日常の出来事に抱く感情はすべて関係してきます。
人間らしさとうまく付き合う
「人間は考える葦である」というパスカルの言葉は有名ですが、
東洋でも、
「凡そ人間は思考しないというわけにはいかない(彭祖)」
「精神は使わないと則ち無用となり、使えば則ち奮い、奮い立てば則ち生き生きとして、生気が旺盛となる(司馬遷)」
という記述があります。

心の動きがあるのが、人間の自然な状態。
いずれの感情もあって当然ですし、いろんな感情を抱くからこそ人間らしくてよいのです。
ちょっとした感情の揺れであれば、気のめぐりの変動も一時的なもので治まります。

ただし、その行き過ぎによってさらに心が苦しくなり、身体にも影響を及ぼし、あらゆる不調を引き起こすのも確か。

では、どのようにすれば感情の行き過ぎを防ぐことができるのでしょうか?

[3]ダイエット中の感情コントロール術

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(※1)それぞれの感情と「五臓」の働きの関連性から、下記のような影響を及ぼします。
  • 過度な「怒」
    気のめぐりを調節する「肝」を損ね、気の停滞に
  • 過度な「思」
    「肝」や、気を作り水を運化する「脾」を損ね、気・水の停滞に
  • 過度な「悲」
    全身へ気をめぐらせる「肺」の気を消耗し、気・血・水の停滞に
  • 過度な「憂」
    全身へ気をめぐらせる「肺」を損ね、気の停滞に
  • 過度な「恐」
    生きるエネルギーの源を蓄える「腎」を損ね、気・血・水の停滞に
 
(※2)過度な(もしくは長期的な)感情により、内臓機能の働き(特に脾胃)が低下し、気血生成の低下や食欲低下、消化不良などを引き起こすことで痩せる場合もあります。



[参考資料]
『中医心理学』たにぐち書店 発行