症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/02/13 (月)

いちばんたいせつなことは、目に見えない

最近、何年か振りに『星の王子さま』を読みました。
たしか最後に読んだのは、漢方みず堂に入社するより前、6年以上前になります。


『星の王子さま』といえば、

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」

という言葉が有名です。
私は今回読んだときに、この言葉がやっと本当に腑に落ちた気がしました。


この前後に出てくる二つの言葉も、印象に残っています。

「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない」

「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」


ここで私は、聖路加国際病院名誉院長を務められ100歳を超えても現役の医師だった、日野原重明先生のこの言葉も思い出しました。

「命というのは君達が使える時間の中にあるんだよ」



命も、時間も、目には見えないけれども確かに存在し、だからこそ私たちは生きています。

そしてその目に見えない時間、命を使って、さらに目に見えない何か―愛情、絆、思いやり、感謝、恩返し、信頼、誠意、希望、夢などを、紡いだり、築いたり、表したり‥‥行動や言葉に、その想いを込めているのだと思います。


私たちはつい、表面的な言葉尻や態度であったり、地位や名誉、功績、収入や資産など、明らかに目に見えるもので判断したり、評価したり、一喜一憂したりしがちです。
目に見えるものは分かりやすく、簡単に理解した気になるからだろうと思います。


しかし、それが全てだと思ってしまうと、「いちばんたいせつなこと」を見失ったり、気づけないままになったりするのかもしれません。

実際に、世界中で起きている戦争から日常的な諍(いさか)いや傷つけ合いまで、人と人が争う背景には、お互いを心から理解しようとしたり、心で触れ合うことができていないことにあるように感じます。



家族も含め周りの人々との関係において、心で相手を見られるようになりたいな。

また自分の言動にも、丁寧に心を込めていきたいな。

まだまだ霞がかった「心の目」を磨き続け、
目に見えるものだけにとらわれず、目に見えないものを見ようとする姿勢を持ち続けられたら、
周りの人々との関係も、自分の心も、もっともっと豊かになっていくだろうな。


なかなか実行するのは難しいことではありますが、少しでも意識して過ごせるといいなぁと思います。


皆さまにとっても「いちばんたいせつなこと」を見出して、自分の大切な時間、また大切な人たちとの限られた時間を、大切に過ごされますように。



[参考文献]
『星の王子さま』サン=テグジュペリ 河野万里子 訳
『生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉』日野原重明 著