症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/10/13 (水)

自然妊娠

中医学での正しい生理(月経)
『医聖』と呼ばれる漢方医、朱丹渓は「子供が欲しいと思ったら、まず月経を調節するしかない」と述べています。

以下4つの質問に答えて、自分の生理が正しいか、チェックしてみましょう。
 
(1)周期は何日ですか? 遅れたり、早くなったりしますか?
周期は25~38日であれば大丈夫。
周期にバラつきがないのがよく、理想的なのは28~30日と言われます。
 
(2)出血の期間は何日間? 量や色はどうですか?
【出血の期間】
3~7日間。
【月経の量】
1日目は少ないが、2日目、3日目は多くなり、4日目から徐々に少なくなり、量は約50~80ml。
【月経の色】
暗紅で、始めは色が薄いが、だんだん深くなり、最後にまた薄くなる。
【月経の質】
薄くも濃くもない、凝固しない、血塊はない、特殊の臭いもしない。

というのが理想です。
 
(3)生理痛はありませんか? 鎮痛剤は使用しますか?
生理痛はない、又はあっても軽い腹痛がする程度が正常です。

鎮痛剤を服用するほど痛いのは、冷えや滞りがある証拠です。
 
(4)生理前や生理時・排卵時など、生理周期によって体調に変化はありますか?
・生理のときに下痢をする。
・生理前に便秘する。
・生理前は情緒が安定しなくなり、だるくなり、食欲が増してしまう。
・生理前に胸が張る。

これらはホルモンバランスが正常でない証拠です。
 
 
ご相談の多い不妊原因
妊娠しやすいカラダとは、体の中をたっぷり綺麗な血液が流れていて、良い卵子が育ち、子宮の居心地がいい状態のことです。

ここでは、代表的な不妊症の原因の漢方的解説と改善方法を簡単にご説明します。
ただし、お一人お一人、お体の状態は違います。自己判断せずぜひ専門のところでご自分に合った漢方薬をお飲みください。
 
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣は、成熟しきれない小さな卵胞が卵巣内にたまって、なかなか排卵しない状態のこと。

漢方では、大きく分けて三つの原因があり、それぞれに違う漢方を使い分けます。
以下三つの原因が絡み合っている場合も多く、一つ一つ丁寧に糸をほどいていくことで、自分の力でしっかり排卵できるようになります。

(1)痰湿・瘀血:卵は育つが、排卵が遅れるタイプ
(2)腎虚:卵の育ちが悪く、排卵が遅れるタイプ
(3)肝鬱:ものごとを考えすぎてしまい、ホルモンバランスを崩すタイプ
 
子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫
子宮内膜症は、子宮内膜が卵巣やその他の場所に存在し、炎症や癒着をおこしている状態。
赤ちゃんができない原因が見つからない女性の約20%に内膜症が発見されるため、不妊と関係していると言われます。

子宮筋腫は子宮内に、卵巣嚢腫は卵巣内にできる良性の腫瘍。
腫瘍があっても妊娠する方は多くいらっしゃいますが、赤ちゃんができない原因が他に見つからない場合は、積極的に治療することが多いようです。


漢方ではどれも、「瘀血(おけつ)」と言って血が滞っている状態。
手術をしても再発しやすいため、根本的な体質改善がおすすめです。

漢方で赤ちゃんは“良い血液の集まり” と考えるため、瘀血体質を改善し、綺麗な血液がたっぷり流れている状態を作ることが妊娠しやすい体質へとつながります。
 
高プロラクチン血症
妊娠していないのに、プロラクチンという催乳ホルモン値が高くなってしまうのが「高プロラクチン血症」。
プロラクチンは排卵を抑える働きがあるため、高プロラクチン血症の90%以上の女性が生理不順です。

漢方で、おっぱいは「肝」と非常に深い関係があります。特に乳頭は肝の経絡の通り道。
また、肝はストレスの影響を直接受けます。

ストレスに強い身体を作っていきながら、鬱々したものを解きほぐす漢方がおすすめです。
 
冷え性
冷えはあらゆる生体機能を低下させます。

漢方では生殖機能を担う「腎」は体を温める役割も担っており、腎が弱いということと、冷え・生殖能力低下は直結します。
また、全ての液体は冷えると固まるように、血液も冷えるとドロドロ傾向になります。

綺麗な血液がたっぷり流れている状態を作り妊娠しやすい体質にするためには、冷えをとることが重要です。
 
35歳以上の方
年齢が高くなれば、妊娠率は下がり、流産率は上がります。
西洋医学的には、劣化というのは体のサビで、その原因としては「酸化ストレス」や「糖化ストレス」とも言われています。

漢方では、老化は「腎」からおこります。
「腎」は親から受け継いだエネルギーをためておくところで、妊娠・出産などと非常に深い関わりがあります。

漢方ではこの「腎」を強化することで、体の老化を緩やかにすることができます。
 
肥満
太っている人や体脂肪率が高い人には、無月経や無排卵の人が多いといわれます。
これは、肥満細胞が男性ホルモンを蓄えやすいということや、脂肪が増えるとあるたんぱく質が減少し卵巣膜が硬くなるということが関係しています。

また、妊娠中毒症のリスクや難産のリスクを低くするためにも、適正体重にしておくことはとても大切です。


漢方でいうと、肥満とは痰湿・瘀血。
つまり、汚れたドロドロとした水分や血液が蓄積されている状況です。
そうなると、その汚れの影響で血液や水の流れが悪くなり、うまく代謝されず悪循環に陥るのです。

子宮の中は暖かく、綺麗な血液で満たされていなければ、赤ちゃんを授かることができません。

綺麗な血液とは、汚れていないこともそうですが、さらさらと緩やかに流れていることが必須条件。
また、卵巣には痰湿という汚れた水も蔓延しやすく、そうすると排卵を阻害したり、ひどい時は卵巣嚢腫のような病気になってしまうこともあります。
 
『妊娠しやすい体づくり』には、漢方薬を
「特に体の不調は感じないがなかなか妊娠しない」
「病院で検査したが異常はないと言われた」
「できれば自然に妊娠したい」
などから、漢方薬で妊娠を望まれる方は非常に多いです。

そして漢方薬は、ホルモン剤で無理やり排卵させたり高温期を維持させる方法ではなく、自分で排卵し、子宮内膜をふかふかにし、赤ちゃんを迎える準備ができる体へ整えていくことを目指します。


西洋医学的には原因が分からなくても、漢方的に見ると体のバランスが崩れていることも。
一見関係ないようなちょっとした不調でも、それが改善されていくことで結果的に妊娠に繋がることは、漢方では稀なことではありません。

年齢的なご不安や基礎疾患をお持ちの方、ステップアップするか悩んでいる方が自然妊娠されたケースも非常に多いです。


漢方みず堂では、上記のような考え方をもとに、お一人お一人のお体の状態に合わせて漢方薬をお選びしております。

また、心の状態や日々のお食事・睡眠も、赤ちゃんを授かる上でとても大切なこと。
その都度お気持ちや状況をお伺いしながら、漢方薬とともにできる養生法などもお伝えさせていただきます。

奥様もしくは旦那様だけのご相談はもちろん、ぜひご夫婦でご相談いただくことをおすすめしております。
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