ロバ由来の生薬
阿膠は、ウマ科ロバの皮を煮込んで作られる膠(にかわ)です。
膠というと、昔ながらの接着剤のイメージだったり、あまりピンと来ないかもしれませんが、ゼリーやプリンの材料、“ゼラチン”のことです。
食用のゼラチンも、牛や豚などの動物から摂っています。ただ、精製され過ぎており、阿膠のような効果は期待できません。
ロバの皮から摂れたもの、特に中国山東省のものが有名で、漢方薬に重宝されています。
コラーゲンの元がたっぷり
煮込む過程で、皮に含まれるコラーゲンが熱でほぐれ、細かくなったタンパク質やアミノ酸、ミネラルなど色々な栄養素が溶け出します。
阿膠にはコラーゲンの材料が沢山含まれるので、美肌・美髪・アンチエイジングなど、美容に良いとTVで話題になったこともありますね。
阿膠は高価なものだった為、入手できるのは高貴な身分の人々だけでしたが、昔から、美容や不妊治療の目的で使われていました。
今も重宝される阿膠、ロバの数が減っているため、希少価値が年々高くなっている貴重な生薬です。
安価なゼラチンで代用されていることも多いですが、本物の阿膠が持つ力はやっぱり魅力的です。
阿膠の薬性
○補血 ~女性の健康と美の秘訣~
体の隅々まで栄養を届け、ツヤ・潤いを生み出す「血」を補います。
特に女性は、「血」の巡りが身体のバランスに大きく影響します。
生理リズム・妊娠力・胎児の発育・更年期の体調・肌や髪ツヤ …
どれも、豊富なきれいな「血」が欠かせません。
阿膠は「血」を補い、ホルモンバランスに関わる「肝」の働きを整えます。
○止血 ~大事な「血」を守る~
補うだけでなく、「血」の漏れを防ぐ働きもあります。
不正出血、鼻血、血尿、血便、憶えのないあざ、流産・・・(赤ちゃんは“「血」の塊”)
まとまる力を失くして体から漏れ出ていく「血」を、本来の場所に留めます。
体力を消耗した時の出血や、虚弱な人、喉や肌が乾燥傾向の人の出血に効果的です。
○滋陰 ~体を芯から潤す~
体の大半を占める水は、血液、リンパ液、汗、消化液などの元であり、体を潤し、体温を適温に保ち、老廃物を流し出す・・・など、沢山の役割を持ちます。
長期間の疲労や病気によって、また、年を重ねると共に、身体は乾いていきます。
ほてり、肌の乾燥、喉が渇く、目が疲れる、足腰がだるい、眠れない、寝汗、便が固い・・・
阿膠は、水分摂取では補いきれない、もっと奥から体を潤します。
呼吸器や肌を整える「肺」を強化し、一生を支えるエネルギー源「腎」を滋養します。
「腎」が弱ると老化が進んでしまうので、良い状態を出来る限り維持したいですね。
阿膠を含む漢方薬
・不正出血、生理不順、不妊症など婦人科系に・・・温経湯、芎帰膠艾湯
・ほてり、不眠、動悸など、潤い不足による熱症状に・・・炙甘草湯、黄連阿膠湯
・血尿、膀胱炎、腎炎など泌尿器系に ・・・猪苓湯
・咳や痰に、特に顔のむくみを伴う場合 ・・・杏蘇散
阿膠を飲む時は、他の生薬を煎じた後に溶かし入れます。
動物特有の匂いがありますが、阿膠の力強いパワーを借りたい時は多少の飲みにくさは我慢です。