症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/27 (金)

茵蔯蒿(いんちんこう)

日本では、夏の終わり頃に咲くキク科カワラヨモギの頭花を用います。

頭花とは多数の花が集まって一つの花のように見えているもので、同じキク科のたんぽぽやひまわりの花もそうです。

カワラヨモギの場合、花びらは目立たず、黄緑色のわずか1~2mmの卵型の頭花は一見つぼみのようです。

この頭花には独特の香りがあり、苦手という人も多いかもしれませんが、生薬としては香りが強いものほど良いものです。

■茵蔯蒿の性質

茵蔯蒿は黄疸の特効薬として重宝されてきました。いかにも薬っぽい強い苦みが特徴的で、利胆、消炎、解熱などに働きます。

黄疸と言えば、肌が黄色くなるのが代表的な症状ですが、胃腸が弱って黄色っぽくみえる場合や、血液が大量に壊れて生じるものには向きません。

漢方的には〝湿熱″といって、体内で淀んだ水分が熱を帯びてどろどろとし、気や津液の流れを邪魔している状態に使います。

体の中がどろどろとすると、流れ出るはずの胆汁が詰まったり、尿が出にくかったり、毒素が溜まって湿疹やかゆみ、胃のムカつきを引き起こしたりします。

茵蔯蒿はこの湿気と熱を除くことで淀みを解消し、さらさらと流れが良くなるよう助けます。

また、凝り固まった肝をほぐして、気や血の鬱滞をとる疏肝作用もあります。

疏肝の代表生薬である柴胡よりもマイルドなため、潤い不足で流れるもの自体も不足している陰虚の人にも使いやすいです。

■湿熱をつくる要因

甘いもの・脂っこいものをよく摂る、お酒の飲みすぎ、食べてすぐ寝る…など胃腸に負担を掛ける食習慣、頻繁にイライラするのも湿熱の要因です。

湿気が多く暑い夏には、体の中も熱と湿気を持つため起こりやすくなります。沢山食べたり飲んだりした翌日、口の中が粘った感じはありませんか?

舌の苔が湿って厚く、黄色いようであれば、湿熱傾向です。

■茵蔯蒿を含む漢方

茵蔯蒿が主役となる漢方には、茵蔯蒿湯や茵蔯五苓散があります。

どちらも湿熱を除くものですが、どの部分に支障が生じているかが異なります。

湿熱が肝の働きを邪魔して、流れを鬱滞させている場合は 茵蔯高湯、脾に負担が掛かり、胃腸を中心に湿熱が溜まっている場合には 茵蔯五苓散が合います。

茵蔯五苓散は二日酔いにもおすすめの漢方の一つです。