症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/27 (金)

桜皮(おうひ)

春爛漫

今年の冬は寒かったので、桜が咲くのが例年以上に待ち遠しかった気がします。各地でライトアップされ、昼も夜も日本中が桜に酔いしれる特別な季節ですね。秋月には桜染めの工房があり、桜が開花する前の枝を使って、綺麗なピンク色のハンカチやスカーフを作っています。桜の枝には花開く前から花の色が閉じ込められていて、それが布をピンクに染めるなんて不思議ですね。桜は事実上日本の国花でもあるし、軽くて綺麗なので、海外などへのお土産にもぴったりです。

桜も薬

ところで桜も薬になるってご存知ですか?鎮咳去痰薬のブロチンシロップは桜の皮のエキスが主成分です。あの咳止め・痰切りの水薬の黒っぽい色が実は桜だったのです。またそのものズバリ、桜皮(オウヒ)という名の生薬もあります。バラ科のヤマザクラやその近縁植物の周囲の皮を取り除いた樹皮です。撲樕(ボクソク)というブナ科のクヌギやその近縁植物の樹皮の代用として使います。日本独特の生薬の一つで、十味敗毒湯という漢方薬に含まれています。

江戸時代に世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術を成功させた外科医華岡青洲が、中国の処方をヒントに日本人の体に合うように考案した処方です。江戸時代から魚の中毒、腫れ物などの皮膚病に使われていたとのこと。皮膚病の原因である毒を敗退させるという意味から命名され、今では湿疹や蕁麻疹、中耳炎などに使われます。

八重桜の花びらにも桜皮と同じ成分が含まれていて、お酒に漬けて飲むと、精神安定、安眠、のどの痛み、美容などにも効果があるそうですよ。