秋の七草の中でも一番身近な植物は葛(クズ)と言えるでしょう。
地球温暖化の影響か、先月までちょっと冷たいものが欲しいような暖かい日もありましたが、
葛はひんやりとして美味しい葛切りや葛餅の原料になります。
これから少しずつ冬に近づいて行きます。
寒くなると暖かな葛湯や葛餡をかけた料理が恋しくなりますね。
マメ科の葛(クズ)の花は葛花(カッカ)と呼ばれ、めまいや悪寒に用いられます。
周皮を除いた根は葛根(カッコン)と呼ばれ、発汗・解熱・鎮痙作用や消化管運動亢進作用があり、
悪寒・頭痛・首筋の強ばり・肩凝り・筋肉痛などに用います。
葛根を使用した漢方薬には葛根湯・葛根湯加辛夷川芎・升麻葛根湯・参蘇飲など沢山あります。
最も有名な葛根湯は風邪薬と思われがちですが、
結膜炎・中耳炎・鼻炎・乳腺炎などの炎症や肩凝り・神経痛・蕁麻疹など、幅広く用いられます。
ただし、虚弱体質の方には通常用いません。
どの患者にも葛根湯を処方する落語の葛根湯医者はこの多岐にわたる効能から来たものでしょう。
虚弱体質の人にも出して怖い思いをしたこともあったでしょうが、幸いこんなオチで終わります。
「胃痛? 葛根湯をおあがり。・・・筋肉痛? 葛根湯をおあがり。次は?」
「先生、私は単なる付き添いですが。」
「付き添い? 退屈でしょう。葛根湯をおあがり。」