症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/24 (火)

「先本後標(せんぽんこうひょう)」~病気の本質を見極める方法~

先本後標(せんぽんこうひょう)

まずは本質を見ること。それから枝葉へ。

病気になる本質とはなんなのか。一言で言うと自然治癒力の低下。

さらには、ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足、運動不足、特に今年のように気温の差の変化やPM2.5などの環境。

つまりは「心・食・動・休・環」(私が書いた、「感謝からはじまる漢方の教え」をご参照ください) その事が大元にあるものの、病気になった原因を探っていくときっとその発端が見つかるものです。

例えば頭痛の場合

たとえば、頭痛がある方にいろいろ聞いていくと、夜眠れなかったり、肩が凝ったりもある。さらに仕事上や、様々な関係の中でストレスを感じていることが多くあります。

そうすると、漢方的には、ストレスにより、肝の流れが滞り、そのため肝のめぐらす作用が阻害され、様々な症状が起こるというように考えます。

漢方で言う肝とは、血液を貯めておく場所であり、一番ストレスによって影響を受け、今風に言えば、自律神経の流れも司る臓器と考えます。

詳しく説明すると、肝の流れ(気)が鬱滞すると、肝気鬱結という状態となり、ちょうど糸で言うとこんがらがってしまっている状態になります。どこかで滞りがおきて、その先の巡りが悪くなり、頭痛になったり、肩が凝ったりすると考えます。

このような時によく使われる漢方薬としては「和解剤」という種類の漢方があります。こんがらがった糸をほぐしていくような漢方。丁寧にほぐして隅々をめぐらす漢方なので、色々な症状が改善していくようになります。

さらに根本の原因は?

さらに進んでいくと、なぜ糸がこんがらがってしまうのか?そこまで行き着くとやはり自然治癒力なんですね。人間には本来多少のストレスがかかっても自分で調節できる力があります。その自然治癒力が低下してしまい、上記の頭痛の例ならば肝の流れが滞ってしまうわけです。

西洋医学では、頭痛には鎮痛剤、不眠には睡眠薬、肩こりには血行を促進したり筋肉の緊張を和らげる薬となります。

漢方の考え方は、その症状がどこからきているのかという事が最も大切で、単にその症状を改善していくという対処療法ではなく、原因を探って、その原因の根元から改善するという考え方をします。

それが先本後標(本=根本が先、標=症状は後で)という事です。

「先急後緩」という場合もある

また一方で、まずは緊急を要する症状から取っていき、その後から慢性的な疾患の治療を行うという場合もあります。

高熱があるのと、高血圧があるのではどちらを優先するか。あたり前に高熱を下げることからですね。

病気の本質を考えながらも、その症状の強弱を考慮する。同じような感じであれば、その症状が出てきている本質は何か。

だからこそ、漢方薬を選ぶ際には、その方の症状をじっくりと聞いて、その本質を見ていかなければいけません。

そこが西洋医学と違い、症状を治すのではなく「人を治す」と言われる所以です。