精神疾患の漢方薬
今から10年以上前、当時は漢方相談薬局に勤め始めた頃で、とにかく勉強しなければ仕事にならないこともあり、辞書よりも重い1000ページ以上ある本を常に持ち歩き、時間を見つけては読み進める毎日。もともと漢方には興味深々でしたので、苦しかった記憶もなく「へえ~こんな病気にも使えるんだ。」「こんなものにも?!」と楽しみながら読んでいた事を良く覚えています。
読んでいて一番驚いたのは、ある漢方薬の使用例に「精神分裂症」と書かれていたことでした。今で言う「統合失調症」です。
がんや難病の漢方薬での治癒例は何度も目にしていましたが、精神疾患の非常に難しい部類に入る疾患にも使えるのだと知り、自分の中での漢方の世界も広がっていきました。
狐惑病(こわくびょう)には甘草瀉心湯
その漢方薬は「甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)」という漢方薬でした。使用例にも驚きましたが、さらに「狐惑病」という記述が目に入りました。
狐に惑わされる病気??
読み進めてみると、「狐にとりつかれたような精神の不安定な状態のこと」でした。これを読み、冒頭の精神分裂症という使用例にも納得がいきました。
甘草瀉心湯が合う体質
漢方の良いところは治るメカニズムの細かい理由は置いておいて、確かに効いたという事実の積み重ねであることです。大昔からあり、長く使われてきて確かに効くというものだけが今に伝わってきているので信頼できます。
そしてどんな人に効くのかを体質という視点で捉えているのも西洋医学と大きく違います。ここを間違うと効くものも効きません。
甘草瀉心湯は、やや体力がある熱証タイプの人の精神疾患(鬱病、不眠症などにも)に良く使用されますが、みぞおちの痞え、お腹がゴロゴロ鳴る、下痢が日常的にある体質(脾胃不和)の方に合います。(自己判断で使用せずに、必ず専門の方に判断していただいてご使用下さい。)
甘いものには鎮静効果がある
ちなみにこの漢方薬の名前にもある「甘草」は、その名の通り甘みが強く、砂糖の50倍とも言われています。
甘いものを食べると、心も体も緩むので、イライラや不安感もふわっと和らぎますが、実際に甘草の薬効にも結構な鎮静効果があります。
伏見稲荷大社で神様の使いとして有名な狐。その大好物はおいなりさんの甘い油揚げと言われますが、私達の心の中の狐もきっと甘いものが好きなのでしょう。
自分の中の狐と上手につきあえば、段々と悪さをしなくなり、その内きっと良いお告げを運んできてくれる存在になってくれるはずです。
漢方を飲めば良くなるわけではない
漢方薬は一つの手段で「この漢方薬を飲んだら、100%良くなる」とは言えません。本当の意味で良くなるためには、カギを握っているのは「心」の状態だと思っています。私のこれまでやってきた実感として、確かに誰しも自分で治す力を持っています。その力を最大限発揮できるようにお手伝いするのが私たちの役目だと思っています。 たった一度の大切な人生を、一緒に大切にしていける相談員として。
そして少し疲れたら、ちょっと休憩しましょう。甘いものでもつまみながら。でも、できれば白砂糖ではないものを。
実は私も甘いものが大好きです。名前のせいにしてはいけませんが・・・。