症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/23 (月)

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)と苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)

1種類の生薬の違いで使い方が変わる
「苓桂朮甘湯」と「苓姜朮甘湯」の中身のうち、3種類は同じ生薬ですが、
苓桂朮甘湯には「桂皮」
苓姜朮甘湯には「乾姜」
が入ります。

どちらも「茯苓・白朮・炙甘草」で体を温め、余計な水を外に出すというのは同じ。
違いは、
桂皮(シナモン)が入れば上半身の症状に、
乾姜(生姜を乾燥して蒸したもの)が入れば下半身の症状に使われます。


漢方薬は一種類の生薬が変わるだけで、こうも使い方が変わります。
処方を考えた、2000年前の人はすごい!
 
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
別名「茯苓桂枝白朮甘草湯」
胃腸を温めて調子を整え、流れの悪くなった水を尿に変えて出します。

金匱要略には
「痰飲を病むは、まさに温薬をもってこれを和すべし」
と治療法が記載されており、
利水剤として冷やさない性質を持つ茯苓、白朮が配合され、炙甘草で胃腸を建て直し気を益す、温める方剤と考えられます。


さらに桂皮が入ることで、のぼせ、動悸、めまい、立ちくらみ、頭痛などの上半身の症状によく使われます。

桂皮は血管を拡張して血行をよくし、お腹や下半身を温め、フワフワと上に上がっていってしまった気を引き戻すような働きがあります。


ちょっと応用で、胃腸が弱く、冷えもあるような妊婦さんのつわりに使用し良好だったこともあります。
 
下半身の冷えむくみに苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
別名「茯苓乾姜白朮甘草湯、甘姜苓朮湯、腎著湯」
苓桂朮甘湯の桂皮が乾姜と変わったことにより、身体の中心(胃腸)を温める効果が強くなります。

金匱要略には
「身体重く、腰中冷え、水中に坐するがごとく~」
と記載があり、
”下半身が水に浸かったように冷えている”と言えばこの処方です。

具体的には身体が重だるい、足が冷えて痛む、むくみ、腹痛、下痢などに使われます。

苓桂朮甘湯が上半身の症状に良く使われるのに対して、苓姜朮甘湯は下半身の症状に良く使われます。