30歳女性、突然の父の他界
実感を得る間もなくお通夜やお葬式の準備に追われ、1週間がたった頃から体がおかしい。
夜眠れない、全身には筋肉痛のような痛み、しびれ、かゆみがある。時々ぎゅーっと絞られるようなお腹の痛みもある。
お子様もまだ小さく、下の子はまだ授乳中、お仕事も始まり休んでなんかいられないのに、体が元に戻らなくてどうしていいかわからない。疲れと不安が入り混じった表情でした。
心身一如
中医学では「心身一如」という言葉があり、心と体は一つと考えます。
心が元気だと体も元気、体が元気だと心も元気。心が病むと体も病む、体が病むと心も病む。心の浮き沈みに体は正直に呼応します。
現代の私たちは心と体を別で考えがちですが、このように私たちの心と体は決して別ものではなく、相互に影響し合って一つです。
怒りも、悲しみも、心配事も、そして喜びでさえ、度を過ぎれば病気の原因になります。
心肝血虚
全身に栄養を運ぶ「血」は精神活動の物質的基礎であり、この「血」を貯蔵するのが五臓の「肝」、全身へ通すのが「心」なので、精神活動は「血」の過不足と「心」「肝」の働きが深く関係しています。
精神活動は直接「心」で行われるため、「血」で潤っていることが大切です。そして「心」が「血」を全身に循環させる過程で、「肝」は「血」を貯蔵して循環量を調節し、その疏泄作用によって循環をスムースにしています。このように精神活動は「心」「肝」が相互に影響し合いながら行っているため、「心」の血不足と「肝」の血不足が起こると、相互に影響しあって、「心肝血虚」の状態となります。
この方の場合は、突然の不幸で心が深く傷つき、対処できない程のショックと目まぐるしい忙しさとで食事をきちんと摂ることができず、また授乳をしていることもあって「心」「肝」の血を十分に補うことができなかったことと、精神的ショックで「肝」の疏泄作用が低下してしまったために、全身に栄養を運ぶことができず、不眠や、痛み、しびれが出ていたと考えられます。
心と肝の血を補う漢方
漢方を飲み始めて、3日目には「ちゃんと眠れるようになっています!」とのこと。私も安心したのと嬉しさで泣きそうになりました。痛みの方も少しずつよくなってきており、体を温めるとよりいいような気がするので、お風呂に入り、温かい漢方を飲んでから眠るようにしています。と、気持ちも少しずつ元気になってきている様子でした。
そして2週間後には、すっかり体の不快感もとれ、朝までぐっすり眠れるようになり、元の生活に戻ることができました。