症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/10/15 (金)

体の痛み

漢方的に痛みを考える場合、「頭痛」「腹痛」「生理痛」「神経痛」「関節痛」などの場所や、痛みの感じ方、そして体質や生活習慣などから痛みの原因やメカニズムを探り、解決方法を導きます。

様々な分類方法があるので、いろんな角度から見極めることで適切な漢方薬をお選びします。
ただ痛みを抑えるのではなく、痛みの起こらない体づくりをするのが漢方です。
痛みの感じ方 分類
  • 風痛
    体の中で「風」が悪さしている場合、痛む場所が変化するような「遊走痛」がみられます。
  • 寒痛
    冷えて痛みが出ている場合、痙攣性の痛みや締め付けられるような痛みがみられます。
  • 気痛
    気の巡りが滞ることで痛む場合、張ったような痛み「脹痛」あるいは遊走痛がみられます。
  • 瘀痛
    血の巡りが滞ることで痛む場合、針で刺すような痛み「刺痛」や突き上げるような痛みがみられます。
  • 熱痛
    熱や炎症が生じている場合、灼熱感を伴う痛みがみられます。
  • 虚痛
    気血が不足することで痛む場合、シクシクした痛み「隠痛」がみられます。
痛みの原因 分類
(1)外邪侵絡
身体の外側からの影響により一時的に起こる痛み。

特に多くみられるのは、冬の冷たい風や夏の熱風などの影響。
身体の防御力「衛気(えき)」を弱め、体表面での気の出入りが阻害され、体内の気血の巡りも悪くなり、頭などの上部から徐々に全身へと痛みが現れます。

風邪のひき始めにみられる頭痛、肩こり、関節痛などが一例で、急に発症して痛む部位も変化するのが特徴です。
代表的な漢方薬
葛根湯、銀翹解毒散、小柴胡湯、辛夷清肺湯、麻黄附子細辛湯など
 
(2)寒凝血脈
寒い時に凍えて身体が動きにくくなるように、「寒邪(かんじゃ)=冷え」は気血の巡りを悪くします。

身体の外側からの影響もありますが、自分で温める力が弱っている場合にも起こります。
「湿邪(しつじゃ)=余分な湿気」が合わさっている場合も。

痛みは激しく冷えを伴い、痛む部位は固定しています。
温めると痛みが軽減するのも特徴です。
代表的な漢方薬
安中散、麻黄附子細辛湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝加朮附湯など
 
(3)気滞肝鬱
強いストレスや情緒不安定により、気血の巡りを調節している「肝」の働きが乱れると気血が停滞し、痛みが現れることがあります。

肋骨辺りや脇腹に張ったような痛みが現れたり、肩こりや頭痛がみられることもあります。
ストレス度合や情緒変動で症状が出たり無くなったり、痛む場所が変わりやすいのも特徴。
代表的な漢方薬
加味逍遙散、釣藤散、抑肝散加陳皮半夏など
 
(4)瘀血阻絡
「瘀血(おけつ)」=血の巡りが悪くなることで起きる痛み。

血の巡りが悪くなるのにも様々な原因があるので、他の原因と複合的に起きている場合が多いです。
冷えはもちろん、「気は血の帥(すい)」といわれるように気の不調は直結しやすく、気虚(気の不足)、気滞(気の滞り)の慢性化により瘀血が起こります。

針で刺すような痛みや、押さえると強くなる痛み、部位が固定した痛みが特徴。
しこりや肌のくすみなどもみられることが多いです。
代表的な漢方薬
牛膝散、折衝飲、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁疎経活血湯、芎帰調血飲第一加減など
 
(5)熱盛灼絡
痛みのある部位の炎症が強い場合は、熱を取り除くことも一緒に行うのが大切。

炎症自体も痛みを伴いますが、炎症が続くことで体の潤い「血・津液」が消耗し、さらに回復を遅らせてしまうからです。

ズキズキと赤く腫れて痛むもの、押さえると痛みが増すものが多いです。
代表的な漢方薬
黄連解毒湯、桃核承気湯、白虎湯など
 
(6)血虚失養
筋肉や骨の栄養でもある「血」は、滞るだけではなく不足することでも、その部位を養うことができずに痛みを引き起こします。

痛み自体はあまり強くなく、シクシクした痛み。
押さえたり温めたりすると気落ちよく、疲労感を伴うことがあります。

例えば、同じ生理痛でも生理期間の後半に出るような痛みであったり、足がつったときの痛みもこの場合が多いです。

芍薬甘草湯のような比較的早く痛みを緩和させる漢方薬もありますが、長期的には血の不足を解消していく漢方薬を続けることが根本的な改善策です。
代表的な漢方薬
芍薬甘草湯、当帰芍薬散、人参養栄湯など
 
『体の痛み』を根本から改善するには、漢方薬を
「肩から手にかけて痺れるような痛みがあり、物を持つのが辛い。」
「長年腰痛に悩まされており、病院に行って痛み止めをもらっている。」
「体の一部分が突然痛むようになり、一向に症状が良くなる気配がない」
「鎮痛剤を服用する回数が増えて心配」
など
漢方みず堂では、痛みに関して様々なご相談をいただいています。


漢方では「不通則痛(ふつうそくつう)」=「通じなければ痛みが発生する」という言葉があります。
慢性的な痛みがある方は「気・血・水」の流れが悪くなっており、その要因は二つ以上が絡んでいることが殆ど。

漢方ではその流れを改善していくことで、痛みを抑えるのではなく、痛みが起こらないような体質へと導いていきます。


漢方相談では、まずはなぜ痛みが慢性化しているのか、体の中でどういうことが起こっているのかを漢方的に紐解き、お一人お一人に最適な処方を選んでいきます。

そして、そもそも体のバランスが乱れる原因は、心・食事・運動・休養・環境の乱れ。
漢方薬を飲むとともにこれらを見直していくことで、自分の良くなる力をより発揮できるようになり改善への大きな後押しとなります。

あらゆる体の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度漢方みず堂にご相談くださいませ。
この記事を読んでいる方は、以下の記事も読んでいます