■半夏の毒
半夏は、サトイモ科カラスビシャクの塊茎を乾燥させたものです。えぐみがあり、美味しくもないですが、そのまま食べてしまうと粘膜を刺激して、舌が腫れたり、声が出なくなったりします。
一般的に漢方薬として飲む場合は、炮製して毒性をなくしています。それでも、ちょっとかじっただけで、舌がピリピリ、喉がイガイガします。
それを緩和するのが、生姜です。漢方処方では、半夏の毒消し役として、生姜をセットで使う事が多いです。
反対に、毒性を高める附子との併用には注意が必要です。
■半夏の効能
半夏には、辛味で温めつつ発散する働きがあります。特に、胃腸の水湿に作用します。胃腸と水のバランスが崩れた症状があれば、半夏の出番です。
○降逆止嘔 ~上逆する気を、下へ降ろす~
上逆の代表例は嘔吐。本来下へと降りていくはずのものが、逆行して上がって来る結果です。
嘔吐の原因は様々ですが、あらゆる吐き気に使えます。
胃に炎症が起こり胃酸と共に上昇してくるもの、水の溜込み過ぎによるもの、胃が弱くて受容しきれずに・・・など、組み合わせる生薬次第で効くタイプも様々です。
○燥湿化痰 ~ 粘る痰を分解 ~
湿気が溜まってくると、痰になります。そして、停滞すればするほど、粘って絡みます。
痰による症状は、咳や息苦しさだけでなく、めまい、動悸、不眠の要因でもあります。
半夏は、痰を分解し、さらさらの水にして流し出す働きがあります。
○消痞散結 ~ 塊を散らす ~
痰が固くなってくると、痞え感や、押すと痛むなど、なにか塊があるように感じます。
固く結びついた痰でも、発散作用で散らします。
■半夏を含む漢方薬
半夏は非常に多くの漢方薬に含まれます。代表格として処方名に使われるほど、重要な生薬です。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)・・・ 喉の詰まり、痰に
・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)・・・ 食べ過ぎた時のムカつき、下痢に
・延年半夏湯(えんねんはんげとう)・・・ 慢性胃炎、胃痛に
・小柴胡湯(しょうさいことう) ・・・ 風邪から胃腸症状が出てきた時に
・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)・・・ つわりに
・抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ)・・・ストレス・緊張からの吐き気などに
・六君子湯(りっくんしとう) ・・・ 胃腸が弱い人に
・二陳湯(にちんとう) ・・・ 水分代謝が悪い人に
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・・・ 鼻炎、花粉症