小柄な77歳女性
8月の終わりの出来事でした。猛暑の中、食欲が落ちすぎることもなく、水分もしっかり取って乗り切ったと思っていました。夜中突然の猛烈な腹痛で、しばらくトイレにこもりましたがお通じも出ず、ただ事ではないと救急で病院にかかられたそうです。診断は腸閉塞になりかけているということで即入院。幸い点滴などで緩和して手術には至りませんでした。
病院の下剤でお通じも出るようになったことで、もう大丈夫とセンノシドと大建中湯を出され退院されました。普段便秘になることはないのですが、腸閉塞と入院の影響で出にくくなっていたようです。しかし次の日にまた腹痛が起こり同じ状況で入院、退院まで前回と同じように過ごされました。
病院の先生曰く、過去に手術経験がある方は腸閉塞を起こしやすい。これが癖になって続くようになったらいけないので、またなるようだったら手術をするということでした。
これにはご本人は大変驚かれました。手術をしたといっても30年も前の事、いままでお通じもよく、こんなことになるとは思っていなかったようです。処方された漢方でもお通じはすっきり出ず、またすぐつまり入院になるのではと大変不安を感じられていました。
「建中湯」類の使い分け
病院では腸閉塞と言ったら大建中湯が出されることが多いです。腸の手術後、腸閉塞の予防のために出されることも多々あります。
同じ”建中湯”という名がつく漢方薬は他にもあります。以下に大まかな使用方法をご紹介します。
大建中湯:虚弱体質で体が芯から冷え、腸の働きが低下し、下痢や便秘を起こしている場合に用います。”腸がもくもく動く”ような感じがある人にぴったりの漢方薬です。
小建中湯:虚弱体質で、腹痛がある場合に用います。のどが渇いたり、唇がかさかさなど乾燥傾向。疲れてくるとイライラしたり、引きつる痛みがある場合にぴったりの漢方です。
中建中湯:大建中湯と小建中湯の合方。
煎じ薬は効きが良い
大建中湯は飲まれていましたが、それでまた入院していますし、ひきつる腹痛がある場合は芍薬+甘草が入った小建中湯がぴったりです。
そこで小建中湯を追加で飲んでいただきました。つまり、大建中湯+小建中湯で中建中湯を飲んでいただいたことになります。
小建中湯を追加することで、体を潤す成分もさらにプラスされたことになります。主な原因は腸の乾燥にありました。年齢を重ねると、体全体の潤いが失われますが、腸の中も同じです。そこに猛暑による消耗が加わり、なおさら腸は乾燥している状態でした。大建中湯にも潤してくれる”膠飴”は入っていますが、煎じ薬で飲まれた小建中湯の効果は別格だったと思います。
飲まれた次の日ですが、便通によるお腹の痛みがあったのち、貯まっていたものがすっきり出るようによく出たと大変喜ばれていました。
その後はお腹が痛くなることもなくすっきり出る日とそうでない日はあるものの詰まっている感じはないということです。