症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2024/09/18 (水)

数字からみる体外受精、漢方は併用するべきか?

ART(生殖補助技術)
女性の卵巣から卵子を、男性からは精子を取り出し、出会わせて授精させる。その受精卵をまた女性の子宮(または卵管)に戻すという方法を、ART(生殖補助技術)と言います。

ARTによる出生人数は2008年頃から急激に増加しており、2021年では約11.6人に1人が体外受精で生まれています。

日本産科婦人科学会の統計データによると、
ARTでの妊娠率は、20代で50%前後、30代になると下降が始まり、35歳で45%、39歳で35%、さらに下降が急速し、45歳で10%、47歳以上で5%未満となっています。

自然妊娠率は、25歳で25%~30%、30歳で25%~30%、35歳で18%、40歳で5%、45歳で1%程度。
科学の進歩はすごいものです。

ただし、ARTでの出生率(学術的には生産率とよばれています・・・)は、妊娠率とは大きくかけ離れて下がります。
流産率が高くなるためです。

2021年の日本産科婦人科学会のデータでは、総治療数あたりの出生率は20代で約23%、35歳で約20%、40歳で約10%、45歳で約1%となっています。


体外受精をすれば、だれでも赤ちゃんを授かることができるということではないことがわかります。
現代医学も、神の領域には到底及ばないということなのでしょうか。


このような数字を並べてみましたが、子供を授かったかどうかは、YESかNO、100か0かです。
50歳近くなっても妊娠、出産した方も実際にいらっしゃいます。

生理がある限りは可能性はあると思いますし、それに懸けたいという気持ちにも、大変共感できます。
 
体外受精にもデメリットが・・・
通常は1個(多くても2個)しか、ひと月に排卵しないのに、体外受精では、より多くの卵を採卵するため、ホルモン剤を用いることが殆どです。自分の自然に分泌するホルモンの影響をなくして、薬剤の効き目をシャープにしたりもします。
不自然なことをすることがスタンダードな治療なのです。

この不自然さも、効率よくするためのものではありますが、長期になればなるほど、体の負担は相当なものになります。

体外受精をしていらっしゃる方の多くは、ホルモン剤で卵巣が腫れたり、吐き気などの副作用に悩まされたり、体重が増加したり、経血の色や量が不自然な状態になったり・・・ということを経験します。
漢方を併用する意味
個人差はありますが、ホルモン剤を使用すると「瘀血」といってよどんだ血液がたまりやすくなります。

例えば受精卵は、子宮内膜がふかふかのベッドのような状態であるほど着床しやすいのですが、
瘀血が生じている場合、子宮内膜が硬く薄くなりやすく、着床しにくくなります。

そのため、血行をよくする漢方薬を併用した方がよいです。


また、多くの卵を短期間につくるため、その素材である「血」「精」が、長く治療をするにつれて減っていきます。
そうなると、卵自体の質も低下しやすく、子宮内膜が薄くなったり、妊娠を継続する力も低下してしまいます。
そのため、「血」や「精」を漢方で補い、また睡眠をしっかりとることが大切になります。


さらに、こどもは、両親の「腎精」というエネルギーを受け継いでいます。
「腎精」が少ないこどもは生まれつき体が弱くなりやすいといわれているので、お母さん・お父さんの「腎精」をしっかり補っていく漢方を飲むとよいでしょう。
特に男性不妊の場合は、この「腎精」が足りないことが多いので、しっかりと補充しなければなりません。

そのほかにも、水分代謝が悪く、ドロドロしたお水が多いと、着床しにくかったり、赤ちゃんが大きくなれなかったりします。
この場合は、水はけをよくする漢方が適しています。(卵管水腫などがある方はこのタイプであることが多いです。)


以上のように、体外受精をするから漢方は不要、ということは、決してありません。
むしろ、「漢方は必須」と言えるかもしれませんね。



[参考資料]
2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績